【運動科学】筋力発揮の科学

スポーツは「頭」で検討して、「感じ」で実践します。スポーツ科学者がスポーツ動作を研究するときには、選手の動作を外から観察して、種々の分析を経て、言語や数値で表現します。しかし、スポーツ選手が実際に運動を行う時には、自分の中の感覚を用います。言語や数値で表し得る客観的分析を基にした動作記述がスポーツ科学の世界です

例えば、陸上競技のスプリント(短距離走)の場合、バイオメカニクス研究者は、走者の脚の後方スイングに目をつけ、世界の一流スプリンターは、脚の後方スイングが速いほど、疾走速度が速いと結論付けました。しかし、後方スイング速度という客観的分析結果をそのまま走る時の主観的動作イメージに持ち込み、後方に脚引き戻す動作感覚(例えば、後方にひっかく感覚)で走ると、走スピードは上がらないです。

客観的に理解したことを、そのまま動作感覚に直訳してしまうと、うまくいかないことが多々あります。客観的世界と主観的世界の二つは、互いに異なる別々の世界を成しています。二つの世界のずれを認識し、二つの世界の対応を考え、互いをどう結ぶのか。それが運動科学というものではないでしょうか。

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太い筋肉は筋力が強い

日本人のスポーツ観は、まずは筋肉、まずは筋力です。マラソンなどの持久的競技ならいざ知らず、パワースピードを要求される瞬発系のスポーツは、筋肉がないと、つまり、筋力がないとできないと考えるのが普通です。身体の小さい日本人は、身体の大きな外人選手に対して、筋肉が違う、筋力が違うと、ある種のコンプレックスを感じる癖があります。従って、日本人がスポーツをする場合、筋肉を鍛える、筋力をつけることから始まります。確かに、筋力は非常に大切な要素です。但し、筋力が大事だと思うあまり、力任せに力んでしまうのは、良くありません。

筋力発揮の科学の要点として、太い筋肉と細い筋肉では、太い筋肉の方が筋力は強いということを押さえておきましょう。

筋の収縮速度と筋力

筋力に関して力-速度の曲線をみると、動作が速くなればなるほど、筋力は低下することがわかる。ゆっくりと動かすときは、大きな筋力を出すことができる。もし見かけ上まったく同じ形態の二人がいたとして、片方の人は速筋線維が多いとすると、その人のほうが速い速度で大きな筋力を発揮することができるであろう。そして、ゆっくりとした速度で出す筋力はほとんど変わらない。この場合、速い速度で大きな筋力を発揮できた人のほうがスプリンターに向いている。速く、瞬発的な動きが必要な運動では、速い速度で大きな筋力を発揮できる人のほうが秀でていることになる。

関節角度と発揮トルクとの関係

図11は、左上のa図が肘関節屈曲、b図が肘関節伸展、c図が膝関節屈曲、d図が膝関節伸展運動で、横軸が関節角度、縦軸が発揮されたトルクである。黒塗りの三角印が等尺性運動 Isometric contraction 、白抜きの三角印が等張性運動 Isotonic contraction 、残りは3種類の速度での等速性運動 Isokinetic contraction を示す。これをみると、運動の速度が速くなるほど、発揮されるトルクが小さくなることがわかる。

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関節角度と筋力

図11の曲線を分析することによって、関節角度の影響を調べることができる。例えば、膝関節について下の図を見ると、伸展運動時は(d図)、膝関節の角度が70°あたりで筋力は最大になり、その後、膝を伸展し続けていくと力は落ちていく。これは膝関節屈曲(c図)でもみられ、動作の最後に近づくにつれ、発揮される筋力は減少していく。また、すべての動作において、運動の速度が速くなると、発揮される筋力は低下していく。肘関節と膝関節で違う点は、それぞれの曲線の形が違うところで、これは膝と肘の構造上の差によって生じるものである。

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まとめ

世界の一流スポーツ選手の動作は、頭の錯覚をそぎ落とし、感覚を研ぎ澄ますことから生まれる。運動は頭で理解して感じて実践する。科学と感覚が織りなすハーモニー。それが運動科学である。今後も運動科学について、学んでいきアウトプットをしていきたいと思います。

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